「周りの人への感謝の気持ちを忘れずに」

エッセイ

「周りの人への感謝の気持ちを忘れずに」

受賞式のスピーチやインタビューなどで、よく耳にする言葉です。

とてもありふれた言葉ですが、私はこの言葉がとても好きです。

もしこの先、万が一(笑)、私も何かを受賞するような日が来るとしたら、きっと最後にこの言葉を使うでしょう。

そしてたぶん、いざ口にしようとしたら、今まで出会った人の顔が浮かんで、ジーンとして、うまく言葉が出てこなくなる。

そんな自分まで、なんとなく想像できます。

突然ですが、今年の夏、私の周りでは不思議なくらい小さなトラブルが続きました。

旅の終わりにスーツケースが壊れ、ケースが開いたまま、荷物が出てしまわないかハラハラしながら帰ってきたこと。

スマートフォンを新しくした時には、古いスマホのデータがすべて消え、大切なものがちゃんと新しいスマホに残っているのか不安になったこと。

旅先では歯の詰め物が取れて、急きょ歯医者さんへ。

そして今度は洗濯機まわりに不具合が見つかり、すぐに直ると思っていたものが、そう簡単にはいきませんでした。

そんな時、なぜか思い出すのが、

「周りの人への感謝の気持ちを忘れずに」

という、あの言葉です。

自分に余裕がない時ほど、周りの人への感謝を忘れない。

そして、目の前に困っている人がいたら、できる範囲で手を差し伸べる。

ある意味、験担ぎのようなものかもしれません。

でも私はここ数年、そんなふうに意識して行動することで、不思議と自分自身の気持ちも落ち着いていくことに気がつきました。

振り返ってみれば、私の人生は、うまくいかなかったことの方が多かったように思います。

でも今は、「うまくいかないことの方が多いのだ」と知れたこと自体が、大人になるということのひとつなのではないかとさえ思っています。

自分の弱さや至らなさを知るからこそ、同じようにうまくいかない誰かの気持ちにも、少し歩み寄ることができる。

そして、自分よりずっとうまくいっているように見える人に対しても、

「この人はきっと、私には見えないところで、たくさんの努力を重ねてきたのだろうな」

と、その背景に想像を巡らせることができる。

うまくいかなかった経験は、私自身の心の視野を広げてくれました。

歳を重ねるほどに、「周りの人への感謝の気持ちを忘れずに」という、ありふれた言葉の意味が、少しずつわかるようになってきた気がします。

私がお花を作り続けていられるのも、決して私ひとりの力ではありません。

これまでお花をご注文くださったお客様のことを思い返すと、本当にありがたいことだなと思います。

これからも「周りの人への感謝の気持ちを忘れずに」、お花を作り続けていきたいと思います。

まだ何も受賞していませんが、今この文章を書きながら、やっぱり少しジーンとして、言葉に詰まっています(笑)。